肌布団投げ上げる空梅雨晴れ間
台風のなまぬる風や胸騒ぎ
花の首刎ねて過ぎ行く雷雨かな
熱風にたぎる心や夏の道
水打てば土臭き風立ちて来る
カタンコトン牡丹燈籠母ギプス
ラオス行
泰然と緑野縫い行くメコンかな
仏塔光る古都ルアンパバン
よしや墜ちてアジアの土になるもよし
ラオス航空古機体揺れて
托鉢の黄衣の僧列行く朝市
米差し出して額づく少女
マンゴ売る老婆の籠に朝の雨
通勤バイク街にひしめく
ゆたかなるメコン河畔に子ら遊ぶ
でんぐり返し水しぶきあげ
陶工の妻の乳房のみずみずし
壷ならぶ土間乳飲み子の這う
落日のメコン河面を読経わたり
恍惚の声這い上がる丘
闊歩する異国の美女の腿白し
ヘリオトロープの香り立ち来る
手をつなぎ宵闇を行く僧ふたり
LaoBeerの酔い街も陶然
昼餉母とワイン飲む卓風薫る
自分恃む若さ青さや吾子の声
母我も腹くくりたる五月闇
五月雨やカンナ研ぐ午後鬱々と
アカシヤの大連の息吹君にあり
娘なき身にはまぶしき花衣
暗闇に桜吹雪くや夜半の風
ひそやかに生命うごめく発芽なり
所在なく春宵果てて寝酒かな
高みより柳を吹いて風光る
暁闇に浮かぶ紅梅ふっくらと
春路傍地蔵を拝む老婆あり
彷徨の春やいくたび巡り来る
かにかくに巡る因果や春霞
三線を爪弾く家や春の宵
春宵はすみれ色して空ゆらめく
寝間で聞くやわらかき音春の雨
ひたむきな男心に遭う春夢
春天を真二つに裁つ飛行機雲
春日和中年ゴジラ涌いて出る
小寒や火照る額に雪溶ける
宗匠にめぐり会いたる冬遍路
この春もまた旅籠屋のわが家なり
年玉は二泊三日で取っていき
子ら発って寂しまぎれの昼寝かな
凍る朝も平気顔してボケの花
アフガンの少年履くや靴洗う
競輪のおけら街道空っ風
雨戸繰る日ごと光に兆す春
朝市の陽だまり白菜ぷりぷりと
夏風邪の氷枕や母の手や
灼ける道に百日紅降る雪のごと
秋彼岸墓と乾杯缶ビール
木犀の香り似合わぬ残暑かな
血圧を上げて秋風ヒューと吹く
蚊の群れも吹き飛ばしゆく秋の風
秋空や蒸発したいよな青さ
ぱっくりと割れた実ザクロわが心
道の果て帰りともない家のあり