酔桃句集
2004年

むなしさやデモの頭上に冬の雲

戦争がデモの尻尾をついてくる

雑踏からデモを見つめる顔また顔

「英霊」になるな殺すな若人よ

売り初めの市の夫婦やさまざまに

大屋根を融け落ちて雪玉すだれ

他国の地を軍靴踏む日や小雪舞う

流れゆく国の何処に棹ささん

 

苦痛より解き放たれて光る髪

豊かなりし太腿の骨白々と

底冷えにただ骨拾う音響く


0417

紫陽花に朗報ひとつ聞かせたり

母と棲む穏やかな日や梅漬ける

緑陰に笑む母の顔幼くて



ジャーナリスト橋田信介氏、小川功太郎氏の悲報に

飄として笑顔優しき記者斃る

君受けしは誰が身代わりの銃弾ぞ

少年の瞳に刻まれし姿永遠に
0424



束の間のみずみずしさや夏の朝

よろめきつ打ち水をする心意気

烈日のフィナーレ麦酒湯引き鱧

エラつけて水族館で暮らしたや
Mさんとの別れの日に



タンネリ(皮染め場)



サハラ砂漠



ベルベル・ダンス



アイト・べン・ハッドゥのカスバ



ジャマ・エル・フナ広場
モロッコにて

0410



カサブランカ

暁闇を裂いてアザーン湧きおこり
白き街越え海に漂う

フェズ

盲いたる老婆スークの辻に立ち
ただひそやかに右掌差し出す

染料の壷に皮踏む職人の
足さふらんの色に染まりて

アトラス越え

風蝕の奇岩林立墓のごと
アトラス山塊大地のたうつ

メルズーガ

金色の朝日にうねる砂の海
素足に沁みる夜気の冷たさ

ベルベルの歌と踊りに夜は更け
砂漠の宿に天の川降る

ワルザザード

行き行けばカスバ街道花盛り
白きアーモンド土の家々

マラケシュ

柔らかき優美なる手に驚きぬ
みな美丈夫のムスリムたちよ

憧れのジャマ・エル・フナの広場なり
暮れゆく雑踏息詰めて見つ

(アニメ: 格山社・穴吹殷人氏)
(アニメ: 格山社・穴吹殷人氏)
(アニメ: 格山社・穴吹殷人氏)

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