2004年
むなしさやデモの頭上に冬の雲
戦争がデモの尻尾をついてくる
雑踏からデモを見つめる顔また顔
「英霊」になるな殺すな若人よ
売り初めの市の夫婦やさまざまに
大屋根を融け落ちて雪玉すだれ
他国の地を軍靴踏む日や小雪舞う
流れゆく国の何処に棹ささん
苦痛より解き放たれて光る髪
豊かなりし太腿の骨白々と
底冷えにただ骨拾う音響く
紫陽花に朗報ひとつ聞かせたり
母と棲む穏やかな日や梅漬ける
緑陰に笑む母の顔幼くて
ジャーナリスト橋田信介氏、小川功太郎氏の悲報に
飄として笑顔優しき記者斃る
君受けしは誰が身代わりの銃弾ぞ
少年の瞳に刻まれし姿永遠に
束の間のみずみずしさや夏の朝
よろめきつ打ち水をする心意気
烈日のフィナーレ麦酒湯引き鱧
エラつけて水族館で暮らしたや
Mさんとの別れの日に
タンネリ(皮染め場)
サハラ砂漠
ベルベル・ダンス
アイト・べン・ハッドゥのカスバ
ジャマ・エル・フナ広場
モロッコにて
カサブランカ
暁闇を裂いてアザーン湧きおこり
白き街越え海に漂う
フェズ
盲いたる老婆スークの辻に立ち
ただひそやかに右掌差し出す
染料の壷に皮踏む職人の
足さふらんの色に染まりて
アトラス越え
風蝕の奇岩林立墓のごと
アトラス山塊大地のたうつ
メルズーガ
金色の朝日にうねる砂の海
素足に沁みる夜気の冷たさ
ベルベルの歌と踊りに夜は更け
砂漠の宿に天の川降る
ワルザザード
行き行けばカスバ街道花盛り
白きアーモンド土の家々
マラケシュ
柔らかき優美なる手に驚きぬ
みな美丈夫のムスリムたちよ
憧れのジャマ・エル・フナの広場なり
暮れゆく雑踏息詰めて見つ
(アニメ: 格山社・穴吹殷人氏)
(アニメ: 格山社・穴吹殷人氏)
(アニメ: 格山社・穴吹殷人氏)